子供達の習い事、そして自分自身も生徒としてピアノの会に出演する時に幾度も緊張しながら立ったホールのステージ。横浜郊外の駅に隣接した建物の設備で音響もなかなか良いので、小規模ながら著名な演奏家のコンサートがゆったり楽しめる穴場のようなところだ。
今日は友人に誘われ、そこで久々にピアノの演奏に浸ってきた。史上最年少8歳で音楽院に入学し、12歳でソロリサイタルをやってのけた中国出身の神童。ホールの運営側と曲目やアンコールなどよく相談した上のプログラムであることは見て取れた。あまり凝った通好みの曲は、普段着で立ち寄る感覚の地域の人に敬遠されがちなので、誰でも耳にした事のある馴染み深い曲が上手に展開されていたと思う。
よく知っているホールだけに懐かしいスタインウェイの響きに郷愁をそそられつつも、流石のプロの迫力ある音色に圧倒された。 彼の超絶技巧とフレッシュさは群を抜くものがあり、神童たる所以は納得したが、ここでやはり「音楽は言葉」と言い続けている身としては、その裏付けとなるポイントは決して聞き逃さなかった。
クラシック曲全般は、何となく言葉の発音としては母音の押しが強いような響きだな?と感じてはいたが、決定的に演奏者の母語を感じたのは、「Amazing Grace」が彼の編曲で演奏された時だった。英語の歌詞を当てはめながら聴いていると、三連符のとこなどが英語とは違う何かを感じた。そう、紛れもない中国語の音の形が部分的に出現し、彼が歌う時の母語の感覚や雰囲気が音に出ていたことがわかった。
これは彼に限ったことでなく、別の中国出身の女性ピアニストにも同じものを感じる。日本人の演奏でも、例えばレストランなどでピアニストが洋楽をアレンジして弾いている時には、その人の前拍の足りないカタカナっぽい英語の発音が透けて見えることがある。
そんな職業病的感想を抱きながらも、やはり良い楽器から紡ぎ出されるダイナミックな演奏でエネルギーをチャージする事ができるのは有り難く、少し音酔いしてクラクラしながら帰途に着いた。
まだ途上とはいえ、発音の世界を極めていくと、今回のピアノのみならず、他の世界の事も深く理解できるようになっていく。アート全般、音や香りの事、五感を超える感性を刺激してくれる物にアンテナを張って、あらためて色々な芸術を大人の学びとして楽しもうと感じた週末の午後でした。
Salon de 925
住所:東京都港区南青山4丁目 (根津美術館近隣)
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